染色石塚工房-Ishizuka Studio-
染色指導
今まで40年にわたり染色に携わり、染色の指導にあたってきました。工房は京都の北部に位置する京北(けいほく)町あります。元京北町は山間の緑豊かな人口5000人の小さな町です。ここで[藍を建てる]、[天然染料で染める][版木を使っての板締染]等のワークショップを計画しています。京北の自然に触れながらじっくり染色について学ぶ機会をもちたいと考えています。
藍を建てる(工程へ) 藍は古来より世界中で染められてきた染料の代表です。
藍は単一の植物をさすのではなく、世界中でその土地、風土に合ったインヂゴ含有植物を使ってきました。主なものをあげてみますと、マメ科のインド藍、アブラナ科のタイセイ、日本ではタデ科の蓼藍(たであい)を使ってきました。蓼藍が使われはじめた当初、おそらく発酵、加温することなく簡単に染めることが出来る生葉染めを行っていたと思われます。生葉染めでは染めることができる期間が限定されてしまいます。
今日では一年中染めることが出来るよう、葉藍を発酵させる「すくも」と呼ばれる製藍法で藍染染料が生産されています。
すくもの製造工程は春先に種を蒔くことから始まり、夏に成長した蓼藍を刈り取った後、天日に干し乾燥させ、葉と茎を分離し、葉のみを集めます。[寝床]とよばれる藍小屋に葉藍を1メートルぐらい積み上げ、水をまんべんなくかけ発酵させます。均一に発酵するよう何度も切り返し、水をかけます。およそ100日ですくもが完成します。
藍染染料の成分インヂゴは水に不溶ですが、アルカリ性の還元状態で水溶性になり染色可能になります。染色工程はこのアルカリ性の還元藍染液に被染物を浸け、染色後ひきあげ空気にさらし酸化させることで発色、定着させます。空気酸化することで藍染染料は被染物に定着し、もとの水に不溶な状態に戻り、堅牢な染物になります。
藍を染める
板締染
Clamp-resist-dyeing

板締は布を一組の板、棒を用いて文様染する染色技法です。まず染める布を屏風畳みし、一組の板で上下より圧縮し、防染します。板締染は二つに分類することが出来ます。どちらの板締も一般的には、布地を屏風畳みにしますが、用いる板が「フラットな板」なのか、文様が彫刻された「版木」なのかで分けられます。前者を板締絞り、後者の板締染は、古代から行われていた「夾纈」が良く知られています。また、板締染は「単色染」か「多色染」でもわけることが出来ます。                                          
 板締染がいつ頃、どこで始まったのか断定するには資料が不足していますが、古代中国において多色染の板締が[夾纈](きょうけち)と呼ばれ、遺跡からの出土、遺された染織裂から、唐以前から宋、明時代に渡って行われていたことがわかります。しかし、時代を経るに従い、多色板締は廃れ、単色板締の[藍板締]のみになっていきますが、この藍板締も50年ぐらい前に廃れています。
日本の板締め(Clamp-Resist Dyeing)−紅板締めと藍板締め−
中文;日本的板缔(Clamp-Resist dyeing)—红板缔和蓝板缔

板締めに関する出版物

紹介する4冊の出版物は文章を執筆した展覧会図録、研究書です。


「京紅板締め」 1999年芸艸堂

日本での板締め染研究は京都造形大学の前身である京都造形短期大学の助成金を得て山口道恵、小名木陽一、並木誠士、石塚広 が初めて取り組み、その成果として展覧会を開催し、図録を兼ねて「京紅板締め」を出版した。現代美術家の束芋の装丁による。


「よみがえる幻の染色」出雲藍板締めの世界とその系譜 2008年 島根県立古代歴史博物館

日本で唯一確認された出雲藍板締の展覧会図録。出雲藍板締の復元研究は当時の材料、道具をできる限り再現し行われた。出雲藍板締復元工程の記録と藍板締めの系譜を辿る構成になっている。


「各美興共生」中日夾纈比較研究 2016年 中華書房

島根県立出雲古代歴史博物館、北京芸術博物館で開催された京紅板締め、中日藍板締めの展覧会図録、論文集。京紅板締め版木((京都造形大学の寄託後、島根県立出雲古代歴史博物館に)出雲藍板締め版木、それと中国藍板締め画像が多数掲載されている。


「夾染彩纈出」 夾纈的中日研究 2017年 山東画報出版社

日本と中国の板締め研究者の論文集。当初、中国語で出版する予定であったが、日本人研究者の文章は日本語で表記されている。校正が活かされないなど出版社の編集が杜撰であったため日本語文章に表記の誤り、見苦しい箇所が多数見られます。 問題の箇所が石塚の文章に集中していたため、改訂文章を随時公開することにしました。


「京紅板締め」

「京紅板締め」

「よみがえる幻の染色」出雲藍板締めの世界とその系譜

「よみがえる幻の染色」
出雲藍板締めの世界とその系譜

「各美興共生」

「各美興共生」

「夾染彩纈出」 夾纈的中日研究

「夾染彩纈出」
夾纈的中日研究

天然染料 天然染料という言葉は合成染料に対する言葉として生まれました。わずかこの100年ほどの間に、私たちにとって最も身近なモノである繊維製品は合成染料で染められ、染料といえば合成染料を指すまでになっています。合成染料は19世紀半ばイギリスのパーキンによって発見され、やや遅れて開発された化学繊維と相まって著しい発展をとげました。化学繊維が量的にも天然繊維と均衡し、バランスよく共存しているのに対し、天然染料は一部の伝統産業を除いて廃れてしまいました。合成染料が色相の豊かさ、色彩の鮮やかさ、染料としての堅牢性、色彩の再現性、使いやすさ、染料の安定供給などの点で勝っています。大量生産、大量消費の現在では、天然染料が染料としての地位を失うのは自明なことなのでしょう。
しかし、近年天然染料が一部のひとの間で再評価され始めています。
天然染料を染色方法で分類しますと大きく以下の3つに分類できます。
A 無媒染タイプ         
被染物を直接染液に浸けるだけで染めるできる染料。クチナシ、ウコンなど。
B 媒染剤を用いるタイプ    
この染料は直接被染物に染着し難く、仲立ちとして媒染剤を必要とします。多くに染料がこのタイプに属します。昔は媒染剤として、わら、椿、ひさかきなどの灰汁、鉄奨、泥を用いていました。
C 還元染料タイプ        
藍が代表的な染料です。この染料分は水に不溶でアルカリ性の還元状態で水溶性になります。 




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